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月下の契り~想夫恋を聞かせて~
第20章 紅蓮(空蝉)
「私は父上の顔もろくに憶えていない。物心ついたときには、この屋敷で四つ違いの姉と母と三人で暮らしていた。家は段々と零落してゆき、使用人も次々といなくなった。満足な給金も支払えず、時にはなけなしの金品を持ち逃げされたこともあった。最後まで残ってくれたのは私の乳母とその息子たちだけだった」

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