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月下の契り~想夫恋を聞かせて~
第5章 真実と恋心
「随分と手間をかけさせてくれたものだな、姫」
 兵たちの列が二つに割れ、その間をゆったりとした足取りで長身の男が現れた。もちろん、薫子の父、権大納言橘諸綱である。流石に諸綱は武装はしておらず、公卿が普段着用する略式の狩衣であった。
 諸綱は余裕の表情で薫子を見てから、憎々しげに承平を睨めつけた。
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