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月下の契り~想夫恋を聞かせて~
第9章 小平太という男
 愕くべきことに、神器が髭切に盗まれたという話は小間物屋でさえ知っていた。あれほど厳しく箝口令が敷かれたというのに、人の口に戸は立てられないとはよく言ったものだ。殊に〝悪は千里を走る〟という。
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