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月下の契り~想夫恋を聞かせて~
第10章 盗賊髭切の正体
「おじさん、温かい中にどうぞ」
「こいつはありがたい。嬶(かか)ァのヤツ、俺の稼ぎが少ないってんで、この頃は弁当の中身もけちりやがるんだ。遠慮無しに頂くとするよ」
 小間物屋は若い頃、女房と娘を流行病(はやりやまい)で失った。以来、独り身を通していたのだが、つい半月ほど前に三十ほどの女と再婚したのだ。
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