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月下の契り~想夫恋を聞かせて~
第10章 盗賊髭切の正体
 今、薫子は洛外に向かって歩いていた。徒歩(かち)で数時間はかかる距離だが、この際、そんなことは言っていられない。
 薫子にはある予感があった。実のところ、まったく根拠のない予感ではあったのにも拘わらず、不思議にその推測に間違いはないような確信も抱いていた。
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