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月下の契り~想夫恋を聞かせて~
第10章 盗賊髭切の正体
 薫子はつと顔を上げた。そろそろ良い頃合いではないだろうか。着物の上から胸許をしっかりと押さえ、固いものが確かにここにあると実感する。薫子自身はまだこの時、考えだにしなかったが、後に皇后まで昇り天皇の母となった彼女が天皇即位の証である神器の一つをこうして取り返し自らの懐に入れたというのも何かの因縁があったかのかもしれない。
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