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月下の契り~想夫恋を聞かせて~
第10章 盗賊髭切の正体
 阿弥陀像の前で手を合わせ一礼し、急ぎ正面扉に走った。その扉に小さな手を掛けて軽く押す。扉をそろそろと開けて外を覗くも、人影はない。
 この分であれば、無事にここを脱出できるかもしれない。―そう考えて、正面扉を閉めたのと聞いたことのある声が聞こえたのはほぼ同時であった。
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