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俺の隣にいればいい
第1章 偶然とはいえ…


「―――だから、何度も言ってるだろ!あんなボロアパート早く出ろって……で、大丈夫なのか?」


短くなった煙草を揉み消し、スラリとした長い足を組み直しすっかり冷めてしまったコーヒーを飲み干した。

イライラとしているのが、眉間に刻まれた深いシワに現れている。

心配からだろうが
傍目からは怖いとしか感じない。


「う、うん……大丈夫だよ。まさか、隣人が同類だとは思わなかったな。ははっ」


「呑気に笑ってんな!だから心配してんだろーが!バカがっ」


「……ごめん。ありがとう、アキ」


怒られていた男は門倉 平良【カドクラ タイラ】、怒っていた男は式部 暁【シキブ アキ】という。

二人の関係は作家と編集者。

今日は原稿の受け渡しの為、喫茶店で待ち合わせをしていたのだが、門倉が大遅刻。

その理由を式部に話していたのだ。
何が起こったかというと数十分前に遡る。

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