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俺の隣にいればいい
第2章 隣人、侵入。

ポカポカと陽当たりの良い窓際の席で茶をすする門倉は、管理人の柴田 花江【シバタ ハナエ】58歳と食堂で談笑中だ。
気の良い花江は変わり者が多い寿荘の住人を、優しく迎えてくれる母のような存在だ。たまに甘えたり、愚痴ったりする住人の言葉を良く聞き答えてくれる相談役でもある。
そんな花江から隣人が、八代 琢磨【ヤシロ タクマ】25歳と恋人の宍戸 歩【シシド アユム】20歳だということを聞いた。
同棲という訳ではないが、ほぼ毎日我が家のように宍戸は通っているという。宍戸は花江になつき、いろんな事を話していたそうだ。
因みに、花江は同性愛について何の偏見もなく『いろんな愛があっていいじゃない』と海のように広い心の持ち主だ。
そんな花江だから
宍戸はなついたのかもしれない。
早く出ろと式部が言うボロアパート寿荘だが住人がなかなか出ていかない理由は、花江がいるからなのかもしれない。
「門倉君は、もう少し部屋の外に出たほうがいいね。お隣さんを知らなかったなんて……琢磨君は知ってたわよ」
「え?俺の話なんてしたことあるんですか!?」
「ええ。お隣さん、ぜんぜん出て来ないけど大丈夫なんですかって…門倉君、死んでるって思われてたのかもよ」
そういえばあの時、名前を呼ばれた気がする…と今更ながら思い出した。
しかし、死んでるって酷いなと門倉は頬を膨らませ、ズズズとわざと音を立てお茶を飲むことで抵抗とした。
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