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私は犬
第30章 主導権*
スペイン産の山羊チーズがある。これも頼もう。ほの酸っぱくて美味しいの。ワインにも負けない。

メニューを見てわくわくしていると、神部君がやってきた。鮎川さん、肝心な時に居てくれないなんて…。

「待たせてごめんね。これ、友達の小林。大学の同級生。」

「は、初めまして九宝です。今日はよろしくお願いいたします。」

噛みながら一気に喋った。多分、棒読み…。目の前の2人は、向かい側の席に腰を下ろした。やっぱり駄目だ…。緊張して、ご飯処の騒ぎじゃない。早くお酒飲みたい…。

鮎川さんがやっと戻って来てくれて、改めて紹介しあって、頼んだお酒を飲んだら少しだけ落ち着いた。

「こいつ、いい奴だから。」

鮎川さんが、神部君にひっきりなしに話題を振り続けている隣で、小林さんが唐突にそう言い出した。こういう時はきっと…。

「はい。私もそう思います。」

うん。飴くれたし、悪い人じゃない。良く知らないけど。

「今度さ、4人でまた出掛けない?」

何処に?何をしに?4人ってまさか、このメンバー?返事を濁すために、ちょっと微笑んでおいた。これで大丈夫…。多分。

鮎川さんがワインを飲むペースが早い…。駄目だこりゃ…。
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