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私は犬
第31章 私の事情②
金曜日
7月に入って、いきなり蒸し暑くなった気がする。オフィスの空調の設定温度は、鮎川さんの気紛れに支配されている…。さっきこっそり温度を弄ったら、5分で気付かれて凄い勢いで元に戻された。
湿気を孕んだ重たい空気が身体にまとわりついて、息苦しい…。梅雨があけたら、もっと辛くなるのかな?私、大丈夫だろうか?
そんな事を考えながら、給湯室で頼まれたお茶を淹れていたら、いきなり横川さんに声を掛けられた。
「随分、丁寧に淹れるのね。煎茶習ったの?」
習ったと言われてふと思い出す。そういえば、おば様は、小川流煎茶の師範だ。小さな頃から手取り足取り教えて頂いたから、自然に身に付いたのだろう。
「特に習った訳ではないです。この淹れ方、おかしいですか?」
「そういう訳じゃないの。九宝さんが淹れてくれると美味しいから、不思議だったの。」
そうなんだ…。おば様は茶道もたしなむけれど、煎茶道も大切にされている。『どちらにも違った良さがあるの。でもお煎茶の方が実用的ね。』
常々、そう仰っていた意味が、何となく分かった。お客様にお茶をお出しして、給湯室に戻ると横川さんがお茶を飲んでいた。
「私にまで淹れてくれてありがとう。やっぱり美味しいわ。このお茶、高いんじゃないの?」
7月に入って、いきなり蒸し暑くなった気がする。オフィスの空調の設定温度は、鮎川さんの気紛れに支配されている…。さっきこっそり温度を弄ったら、5分で気付かれて凄い勢いで元に戻された。
湿気を孕んだ重たい空気が身体にまとわりついて、息苦しい…。梅雨があけたら、もっと辛くなるのかな?私、大丈夫だろうか?
そんな事を考えながら、給湯室で頼まれたお茶を淹れていたら、いきなり横川さんに声を掛けられた。
「随分、丁寧に淹れるのね。煎茶習ったの?」
習ったと言われてふと思い出す。そういえば、おば様は、小川流煎茶の師範だ。小さな頃から手取り足取り教えて頂いたから、自然に身に付いたのだろう。
「特に習った訳ではないです。この淹れ方、おかしいですか?」
「そういう訳じゃないの。九宝さんが淹れてくれると美味しいから、不思議だったの。」
そうなんだ…。おば様は茶道もたしなむけれど、煎茶道も大切にされている。『どちらにも違った良さがあるの。でもお煎茶の方が実用的ね。』
常々、そう仰っていた意味が、何となく分かった。お客様にお茶をお出しして、給湯室に戻ると横川さんがお茶を飲んでいた。
「私にまで淹れてくれてありがとう。やっぱり美味しいわ。このお茶、高いんじゃないの?」