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私は犬
第8章 お仕事です③
帰宅しようと更衣室に向かうと、渡辺さんが居た。

出来れば会いたく無かった…。何か声を掛けるべきだろうか?少し悩んで、皆がしているように、

「お疲れさまです。」

と言ってみた。が、返事は無かった。背を向けて急いで着替えていると、不意に背中に触れるものがあって、

「キャッ」と悲鳴が口から飛び出してしまう。

振り向くと渡辺さんが居て「あんた凄いの着けてんね。」

と口角を微妙にあげながら言うから、ニヤリと笑っているように見えた。

そして、ブラジャーのホックをバチンと戻された。あんな場所を摘まんで、この方は一体何がしたいのだろう?

「やめてください」

いきなり触れるなんて、失礼だもの。きちんと言うべきよね。

「ふぅん。」

へ?ふぅん?何、このしたり顔は?

「相変わらず凄いカバン持っちゃって。そんな格好して。変だと思ってたけど、やっぱりね。」


やっぱりって何だろう…。

何だろう。かかわり合ってはいけない気がする。ここは相手にしないで逃げよう。

「お先に失礼します。」

そう告げて、足早に更衣室を後にした。何だろう…。とてつもなく嫌な予感がする……。
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