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私は犬
第32章 我慢の限界*
「そういえば、村上さんはどうされたの?」

そう。お付きの方が居て下さらないと、色々不便だわ。

「あんまり煩いから休暇をあげたの。今頃その辺で観光でもしてると思うわ。」

軍隊プログラムに頭にきて、スケジュール管理する方を追い出したのね…。

「横田さんはどうされているの?今回は来なかったの?」

「来たわよ。今はウィーンにお使いに行って貰っているの。」

シラッと悪びれる素振りも見せずに、おば様は仰る。横田さんも、ついでに追い出されたって訳ね…。

「……何のお使い?」

「ゲルストナーの菫の砂糖漬けと、オバラーの焼き菓子。」

ふとお部屋の隅を見ると、紙袋が沢山あった。中を見てみると、イタリアの木製のピノキオ人形や、ノッベラ薬局の石鹸やら、フィレンツェのマーブル紙やら、イタリアの特産品が色々入っている。

フィレンツェの次はウィーン…。東京から、沖縄や北海道にお買い物に行かせるようなものだわ。

横田さん、村上さん…。何と申しましょうか、お疲れさまです…。

自室に戻って、孝徳さんに連絡をとった。事情を説明して、強行プログラムの解除を要請する。おば様も頑固だけど孝徳さんも負けて無い。

『カードや現金まで取り上げても、知ってる方にお金を借りて、日本大使館でパスポートの再発行を申請されたらどうするの?』と、半ば脅すように切り出して、やっと納得して貰った。

次は春木さんに必要な事をお願いして…。やっと色々な事に目処が立つ。

春木さんが、おば様に会わずに帰った理由が、何となく理解できた気がした。
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