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私は犬
第32章 我慢の限界*
「このワイン、美味しいわぁ〜。どこのワイン?」

と、剛ちゃんが聞くと、

「うちの実家のワインです。樽から瓶に詰めないでアレで持って来ちゃった。」

と、テレーザさんが部屋の隅のポリタンクを指差した。

アルメリコが、茹でた馬鈴薯や白アスパラに、ラクレットオーブンでトロトロに溶かしたラクレットチーズを掛けて渡してくれる。

「やっぱチーズはこうでなきゃな。いっぱい食いなっ。」

うん。私もそう思う。つうか、これ熱い…。

この人たち、食べ出したら長い…。5Lタンク2個に入ったワインなんて、あっという間に終わってしまって、家にあるお酒で男性陣の酒盛りが続いてる。

正式には、私がこの家の主だから、ホスト役をつとめるべきだけど。春木さんがやって下さるから大丈夫。

パーティーと呼ぶには、余りにも質素で地味な集まりだけど。何を食べるか。より、誰と食べるか。が大切な気がする。皆で食べると、何でも美味しい。

空いたお皿を下げるふりして抜け出そう。そう思ってお皿を片手にキッチンへ行くと、テレーザさんが着いてきた。

「ベルナープラッテ美味しかった。作ってくれてありがとう。ご馳走さま。」

とお礼を伝えると、

「義母の味にはまだまだ及ばないけど、喜んでくれて良かった。」

と言って笑った。
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