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私は犬
第32章 我慢の限界*
「今年も寄付をありがとう。あなたと、九宝夫人には皆、感謝しているのよ。」

「テレーザに、そう言って貰えて嬉しいわ。こちらこそありがとう。」

「私たち、明日仕事だからもう帰るけど。会えて良かったわ。また来てね、絶対よ…。」

キッチンでビズを交わすと、テレーザさんの手が私の背中を強く抱き締めた。ちょっと照れくさい…。

テレーザさんは、酔っぱらったイザークさんを連れて帰って行った。

テレーザさんのご実家は、おば様が懇意にしているワイン農家。私がまだ幼い頃、テレーザさんの一番下の弟さんが重たい病気になった。

スイスの医療費は物凄く高いそうで、医療保険に加入していても、最先端医療の恩恵を受ける為には、やはりお金が要る。

当時それを知ったおば様は、無償で最先端医療の為の金銭援助を申し出たそうだ。

治療の甲斐もなく、小さな弟さんは亡くなってしまったそうだけど。

そんな背景もあってか、テレーザさんは仕事とは別に、虐げられている子供や助けが必要な子供の為の、小さなボランティア団体で細々と活動している。

最初にその団体からパーティーに招待されて、援助を打診されたのはおば様だけど。その活動内容を又聞きして、私も幾ばくかの援助をしようと決めた。
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