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私は犬
第32章 我慢の限界*
旅行に来てまでお買いものしてどうすんのよ…。滞在中、パリやミラノで散々したでしょ?それに…。

剛ちゃんを無視して本屋へ向かうと、文句を言いながら追いかけてきた。やっぱり…。

外国で、私は絶対に1人にならない。というか、1人になれない。必ず誰かが側にいる。小さな子供じゃあるまいし…。と思ってハッとした。

子供の頃、スイスやフランスをおば様と2人きりでお出掛けすると、必ず幽霊みたに人が遠くから着いてきた。不思議に思って『あのオジサンだぁれ?』と聞いた事がある。

おば様は『さぁ?誰も居ないわよ?』と仰ったけれど、その後で幽霊さんとおば様がお話しているのを偶然見た。

私、もしかして、今でも誰かにつけられているの…?恐る恐る後ろを振り返ってみたけど、たくさんの人の中に、それらしい人は見つけられなかった。

「あんた、前見て歩いてちょーだい。転ぶわよ。」

「…うん。」

剛ちゃんなら何か知っているかもしれない。聞いてみようか?教えてくれるかな?

「ねぇ、本屋ってここ?随分古めかしい本屋ねぇ…。」

迷っているうちに、本屋に着いてしまって、聞きそびれちゃった。

中に入る前に、もう1度後ろを振り返る。人はたくさん居たけど、やっぱり怪しい人なんて見分けられなかった。
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