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私は犬
第32章 我慢の限界*
時間に間に合うようにホテルへ戻る。部屋に着くなり、支度が始まった。お食事の予約をしている筈だから、その為の支度だろう。
「私、お洋服これしか無いわよ?着替えなんて持ってないの。」
そう。灰色の麻のテーパードパンツに、水色の極細縦ストライプの襟袖無しシャツ。上から長めの紺色のカーディガンを引っ掛けて、靴はぺたんこの赤。
「あるから大丈夫よ。」
剛ちゃんは、そう言うと何処からかか、白地にカラフルな花が不規則にちりばめられたワンピースを出してきた。
「これ着て頂戴。少し派手だけど夏だから大丈夫。」
「…これしか無いの?」
「無いわよ。これ着ないと出掛けられないからね。」
「これ、オスカー・デ・ラ・レンタよ。このデザイナー亡くなったの。わたし大好きだったのに…。もう、彼の作ったドレス着られないのよ…。」
派手で気が進まなかったけど、剛ちゃんが凄く悲しい顔をしながら亡くなったなんて言うから…。断ってはいけない気がした。
「わかった。これ着てお出掛けする。」
着替えながら、エンデのお婆ちゃんの作った美味しいお料理も、もう2度と食べられなくなるのだろう。と思った。人が死ぬってそういう事…。
2度と会えなくなって、2度と触れなくなって。どんなに恋しく思っても、記憶を思い返す以外、なすすべがなくなっちゃうんだ…。
「私、お洋服これしか無いわよ?着替えなんて持ってないの。」
そう。灰色の麻のテーパードパンツに、水色の極細縦ストライプの襟袖無しシャツ。上から長めの紺色のカーディガンを引っ掛けて、靴はぺたんこの赤。
「あるから大丈夫よ。」
剛ちゃんは、そう言うと何処からかか、白地にカラフルな花が不規則にちりばめられたワンピースを出してきた。
「これ着て頂戴。少し派手だけど夏だから大丈夫。」
「…これしか無いの?」
「無いわよ。これ着ないと出掛けられないからね。」
「これ、オスカー・デ・ラ・レンタよ。このデザイナー亡くなったの。わたし大好きだったのに…。もう、彼の作ったドレス着られないのよ…。」
派手で気が進まなかったけど、剛ちゃんが凄く悲しい顔をしながら亡くなったなんて言うから…。断ってはいけない気がした。
「わかった。これ着てお出掛けする。」
着替えながら、エンデのお婆ちゃんの作った美味しいお料理も、もう2度と食べられなくなるのだろう。と思った。人が死ぬってそういう事…。
2度と会えなくなって、2度と触れなくなって。どんなに恋しく思っても、記憶を思い返す以外、なすすべがなくなっちゃうんだ…。