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私は犬
第33章 さよなら
1週間後、灰になって壺に納められたエンデお婆ちゃんにさようならをして、迎えに立ち寄った有史さんと一緒に日本に戻った。

生前に遺した言葉通り、来年の11月2日の死者の日を待って、撒骨するのだとイザークさんが言っていた。

生前、お婆ちゃんが暮らしていた別荘の離れには、今はイザークさん夫婦が住んでいて、、お婆ちゃんの面影なんて、もう何処にも無い。

マリー・リンヌ・マルグリート・ドゥ・ロレーヌ・エンデ。初めて知ったお婆ちゃんの名前は、長い名前だった。おば様がエンデ夫人と呼んでいたから、真似ていたけど。なぜ、皆のようにマリーお婆ちゃんと呼ばなかったのだろうと、今更ながら悔やまれる。

スイスに帰る理由が、無くなってしまったように感じられて仕方ないのは、エンデお婆ちゃんが居ないからだ…。

「おいで。寝る時間だ…。」

有史さんに手を引かれてベッドへ潜った。この人は何がしたいのだろう。何で私を1人にしてくれないんだろう……。

「別荘の庭の、あの洋梨の木の根元にあった石碑の、ロルフって犬?」

「うん…。お爺ちゃんが飼っていた犬。偉大な狼と云う名前に、全然相応しくない、呑気な犬だったの。」

ロルフは私が16の秋に天国へ旅立ってしまって、お爺ちゃんが泣きながら、あの場所へ埋葬した。
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