この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
陽炎ーカゲロウー
第3章 朝餉
翌朝。

赤猫が目覚めたのは日がたかくなってからだった。


隣に市九郎の姿はない。

一人、夜具の上に身を起こしてみると、薄汚れた敷布に散った血が見えた。

洗濯しようにも、洗濯場の場所もわからぬし、市九郎に聞かねばなにもできない。


赤猫は諦め、起き上がって着物を着た。


喉が、渇く。

そういえば、水瓶があったはずだ。



赤猫は衝立の裏から出て、部屋の中を見回した。

昨夜は暗かったから、よくわからなかったが、朝の光の中で見ると、本当に目立つものが何もないガランとした部屋だった。

土間には水瓶がひとつあるきり。
釜戸もない。

板間の真ん中に囲炉裏。
あとは、壺や木の箱が幾つかあるだけだった。

水瓶から水を掬い、喉を潤す。

喉の渇きがおさまると、今度は腹が減ってきた。

食べるもの、何かないかな…

試しに壺の蓋を開けてみる。

中身は、菜っ葉の塩漬だった。

食べるものがあった…

赤猫は嬉々として、次の壺を開ける。

梅干が入っている。


後は、米があれば完璧なのだけど…と、木の箱に手をかけると、そこには。

米が入っていた。

やった!
少しくらいなら食べてもわからぬだろう。

赤猫は木箱からひと掬いの米を取り、鍋に入れた。そのまま水を入れ、囲炉裏に火をつける。
菜っ葉の塩漬と梅干も拝借した。
包丁とまな板は見当たらなかったので、手で細かくちぎった。
菜っ葉の塩気が、荒れた指先にピリッと染みる。だが、その痛みすらも心地良く感じるほどに、赤猫の心は高揚していた。
まともな飯など幾日ぶりか。

部屋を見渡し、壁にかかった獣の干し肉も見つけ、それも少し頂く。
吊るした糸は歯で噛み切ったが、流石に干し肉は手では砕けない。
そのまま鍋に放り込んだ。

しばらくすると、湯気とともに、鍋の中身がくつ、くつ、と、粘りのある音を立て始めた。
いい匂いに心が弾む。

その時。

ガラリ

戸が開いて、市九郎が帰ってきた。

怒られる‼︎

咄嗟に思ったが、隠れる場所もないし、言い訳もできない。
赤猫は首をすくめて目を閉じた。
/100ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ