この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
陽炎ーカゲロウー
第3章 朝餉
「なんだ、飯か。気が利くじゃねぇか。」
市九郎は怒ることなく、囲炉裏の前にあぐらをかき、鍋の中身を杓子でかき混ぜた。
「そこの木箱に椀と箸があったろ。出せ。」
赤猫はおずおずと、示された木箱から椀と箸を一組取り、市九郎に渡す。
きっと、食べさせて貰えないんだろうな。
さっきまでの高揚した気分が一気に沈む。
すると、市九郎は。
「お前の分は?まだ椀あるだろ?」
「た、食べても…いいの?」
恐る恐る尋ねる。
市九郎は奇妙な顔で、
「その為に作ったんじゃねぇのか?
まぁ食わねぇなら俺が食っちまうけどよ」
「食べたい…」
「なら椀取れよ。変なヤツだな、お前」
椀を渡すと市九郎が粥をよそってくれた。
はふ。
一口含む。
いい塩気と肉の出汁がでて、とても美味しかった。
食べながら、市九郎の様子を伺う。
「あ、あの勝手に米使って、怒らないの?」
「なんでだ?
この部屋にあるもんは何でも使え。欲しいもんがあれば俺に言え。
お前は俺のモンなんだから、俺がお前の面倒見るのは当たり前だろ。
…それにお前は、もうちっと、食って肉つけろ。そんなガラ骨みてぇな身体じゃ抱いたって気持ちよかねぇンだよ」
「は、はぃ…」
「それから。
この土間に湯桶を運ばせる。毎晩若えモンに湯運ばせるから、ここで湯使え。大方そのツラじゃ湯屋なンか行ったことねぇんだろ?」
確かに、火傷を負ってから、風呂など入ったことがない。
湯屋に行く金もなかったし、あったとしてもこの顔では入れてはもらえぬだろう。
夏場に、川や池で行水をするだけだった。
稀に、温泉とでもいうのか、温い水が湧く場所で身体を拭くことはあったが、そういう場所には他の人間もくる。いつでも使えるわけではなかった。
「糠袋も持って来させるから、それで身体を磨くんだ。お前は磨きゃァ光るタマだ。隅までキッチリ磨けよ。」
ニヤリと口角を吊り上げる市九郎の意図が掴めず、赤猫は戸惑った。
身体は磨いて光ったとしても、この顔は変わらぬのに…
市九郎は怒ることなく、囲炉裏の前にあぐらをかき、鍋の中身を杓子でかき混ぜた。
「そこの木箱に椀と箸があったろ。出せ。」
赤猫はおずおずと、示された木箱から椀と箸を一組取り、市九郎に渡す。
きっと、食べさせて貰えないんだろうな。
さっきまでの高揚した気分が一気に沈む。
すると、市九郎は。
「お前の分は?まだ椀あるだろ?」
「た、食べても…いいの?」
恐る恐る尋ねる。
市九郎は奇妙な顔で、
「その為に作ったんじゃねぇのか?
まぁ食わねぇなら俺が食っちまうけどよ」
「食べたい…」
「なら椀取れよ。変なヤツだな、お前」
椀を渡すと市九郎が粥をよそってくれた。
はふ。
一口含む。
いい塩気と肉の出汁がでて、とても美味しかった。
食べながら、市九郎の様子を伺う。
「あ、あの勝手に米使って、怒らないの?」
「なんでだ?
この部屋にあるもんは何でも使え。欲しいもんがあれば俺に言え。
お前は俺のモンなんだから、俺がお前の面倒見るのは当たり前だろ。
…それにお前は、もうちっと、食って肉つけろ。そんなガラ骨みてぇな身体じゃ抱いたって気持ちよかねぇンだよ」
「は、はぃ…」
「それから。
この土間に湯桶を運ばせる。毎晩若えモンに湯運ばせるから、ここで湯使え。大方そのツラじゃ湯屋なンか行ったことねぇんだろ?」
確かに、火傷を負ってから、風呂など入ったことがない。
湯屋に行く金もなかったし、あったとしてもこの顔では入れてはもらえぬだろう。
夏場に、川や池で行水をするだけだった。
稀に、温泉とでもいうのか、温い水が湧く場所で身体を拭くことはあったが、そういう場所には他の人間もくる。いつでも使えるわけではなかった。
「糠袋も持って来させるから、それで身体を磨くんだ。お前は磨きゃァ光るタマだ。隅までキッチリ磨けよ。」
ニヤリと口角を吊り上げる市九郎の意図が掴めず、赤猫は戸惑った。
身体は磨いて光ったとしても、この顔は変わらぬのに…