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陽炎ーカゲロウー
第4章 過去
「そんなことお言いでないよ、定吉っつぁんの借金はあの子のせいじゃアないんだもの」
「親の借金、子が返すのは当たり前だろうが!」
「だいたい定の野郎、調子が良くッてよ、ちぃとも返さねえんだもの、しょうがねぇや」
「じゃア、あんたらは、テメェの借金のかたに娘が廓に放り込まれたって化けて出たりはしねぇってのかい?」
「そりゃモノの例えだろうが。しかし実際よ、廓にゃ売れねぇし、どうするかねぇ」
「お針子か、髪結いか、手に職つけてやりゃあ独りでもなんとかなるんじゃ、ないのかねぇ?」
「それがモノになるまで、誰が面倒見んだぃ」
「…………」
一番肝心な部分にくると、皆自然と口を噤む。
持ちつ持たれつ、と言うのは、己もいずれ世話になることがある、というのが前提で、背負い込むだけの関係はそうはいわない。
あらたに出来た己の子ですら、流すか間引く。
一人でも食い扶持を減らさねばならぬ貧乏所帯に、他人の子を引き取る余裕などありはしない。
「親の借金、子が返すのは当たり前だろうが!」
「だいたい定の野郎、調子が良くッてよ、ちぃとも返さねえんだもの、しょうがねぇや」
「じゃア、あんたらは、テメェの借金のかたに娘が廓に放り込まれたって化けて出たりはしねぇってのかい?」
「そりゃモノの例えだろうが。しかし実際よ、廓にゃ売れねぇし、どうするかねぇ」
「お針子か、髪結いか、手に職つけてやりゃあ独りでもなんとかなるんじゃ、ないのかねぇ?」
「それがモノになるまで、誰が面倒見んだぃ」
「…………」
一番肝心な部分にくると、皆自然と口を噤む。
持ちつ持たれつ、と言うのは、己もいずれ世話になることがある、というのが前提で、背負い込むだけの関係はそうはいわない。
あらたに出来た己の子ですら、流すか間引く。
一人でも食い扶持を減らさねばならぬ貧乏所帯に、他人の子を引き取る余裕などありはしない。