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陽炎ーカゲロウー
第5章 欲
二月もすると、赤猫の身体は見た目にも変わってきた。
痩せた体に程よく肉が付き、女性らしくなった。
元々夜しか活動しなかったため、日焼けも知らぬ肌は、
毎日ぬか袋で磨き上げた甲斐もあってか、透き通るほどに白く、しっとりと吸い付くような柔らかさ。
十八の張りのある身体に、男を知って色と艶がのる。
首から下だけならば遊郭の太夫にすら引けを取らぬだろう、美しさだった。
今日も赤猫は、湯につかり、身体を磨いて、市九郎の帰りを待つ。
市九郎は、毎日帰って来るわけではない。
いつ戻るかはわからない。
それでも。
「俺が帰った時には、いつでも抱けるようにしとけ」
それが、市九郎から下された命だった。
赤猫は素直に従う。
彼女は、市九郎のモノだから。
逆らう、という概念はなかった。