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陽炎ーカゲロウー
第5章 欲
ガタリ
戸が開きかけ、つっかい棒で止まる。
ガタガタと外から戸を揺らす音。
「開けろ!」
不機嫌な市九郎の声が聞こえた
赤猫は慌てて湯桶から上がり、手拭いで身体を隠してつっかい棒を外した。
ガラリ、と戸が開くと、冷たい冬の風が吹き込んだ。
湯で温まった身体を引き締めるような冷たさ。
市九郎は後手で戸を閉め、赤猫の姿を見ると、目を細め、ニヤリと口角を吊り上げた。
「なかなか、そそる格好してんじゃねぇか。」
「あ、今、湯を…」
「見りゃわかる」
行灯の灯りの中、市九郎の視線が、身体を舐めるように這う。
赤猫は頰に朱を走らせ、湯桶の陰に隠れるようにじりじりと後ずさりした。
市九郎は顎を捻り、考えるような仕草をしたかと思うと、やおら着物を脱ぎだした。
一気に下帯まで外すと、そのまま湯桶に身を沈ませる。
「あぁ〜、生き返るな、こりゃあ。」
身体の大きな市九郎が入ると、湯桶からザアッと湯が溢れ、土間に置いた木桶がコトリ、と動いた。
「来い」
湯の中で両手を広げ、赤猫を呼ぶ。
「え⁉︎」
赤猫は驚いて更に後ずさったが、市九郎の有無を言わさぬ視線に、おずおずと湯桶に近寄った。
決して大きくない湯桶は、市九郎が入ると赤猫の足は底に踏場もない。自然と膝の上に座るような形になる。
赤猫が身を沈めると、更に湯が溢れた。
戸が開きかけ、つっかい棒で止まる。
ガタガタと外から戸を揺らす音。
「開けろ!」
不機嫌な市九郎の声が聞こえた
赤猫は慌てて湯桶から上がり、手拭いで身体を隠してつっかい棒を外した。
ガラリ、と戸が開くと、冷たい冬の風が吹き込んだ。
湯で温まった身体を引き締めるような冷たさ。
市九郎は後手で戸を閉め、赤猫の姿を見ると、目を細め、ニヤリと口角を吊り上げた。
「なかなか、そそる格好してんじゃねぇか。」
「あ、今、湯を…」
「見りゃわかる」
行灯の灯りの中、市九郎の視線が、身体を舐めるように這う。
赤猫は頰に朱を走らせ、湯桶の陰に隠れるようにじりじりと後ずさりした。
市九郎は顎を捻り、考えるような仕草をしたかと思うと、やおら着物を脱ぎだした。
一気に下帯まで外すと、そのまま湯桶に身を沈ませる。
「あぁ〜、生き返るな、こりゃあ。」
身体の大きな市九郎が入ると、湯桶からザアッと湯が溢れ、土間に置いた木桶がコトリ、と動いた。
「来い」
湯の中で両手を広げ、赤猫を呼ぶ。
「え⁉︎」
赤猫は驚いて更に後ずさったが、市九郎の有無を言わさぬ視線に、おずおずと湯桶に近寄った。
決して大きくない湯桶は、市九郎が入ると赤猫の足は底に踏場もない。自然と膝の上に座るような形になる。
赤猫が身を沈めると、更に湯が溢れた。