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陽炎ーカゲロウー
第6章 動
ー小刀が欲しい。

赤猫が、市九郎に言った。

「ンなモンどうすんだ?それで俺の寝首でもかくつもりか?」

市九郎は、例の意地の悪い笑みを浮かべる。

「違うよ。私があんたに仇なすことなんか、天と地がひっくり返ったってない。約束する。」

「じゃ何に使うんだ」

「私だって夜盗の端くれだ。自分の身は自分で守りたいし、あんたの助けにもなりたい。…ここで、日がな一日あんたの帰りを待ってるだけじゃ、身体が鈍る。いざって時に、あんたの枷になりたくないんだ。」

市九郎は目を細め、顎を捻る。

「俺が、お前一人背負って走れねぇように見えるか?言ったろ、お前は俺が護るって。信用ならねぇか?」

「そうじゃない。その言葉は嬉しいよ。でも。私も外に出たいんだ。あんたの仕事を、私も見てみたい。勘が戻るまで、ちゃんと稽古する。絶対に、足手まといにならないようにするから」

「外に出たいねぇ…他の男に抱かれたくなったんじゃアねぇだろうな?」

「あんた、男の癖に悋気持ちかい?心配しなくッたって、私を抱こうなんて度胸のある男はそうそういやしないよ。こんな顔だもの」

ニヤリ、と口角を吊り上げる赤猫に、以前の卑屈さはない。

市九郎に貰ったあの言葉は、確かに彼女の自信になった。火傷の痕は変わらないのに、左側の半顔に宿る光は、妖艶さすら感じさせる。

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