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陽炎ーカゲロウー
第7章 八尋

いつ見ても、花が開くような、艶やかな笑顔。

眉も鼻筋も細く、睫毛が長い。

役者のように美しい。

女の赤猫が思わず見惚れるほどだった。


「いつも思うけど。八尋は綺麗だね。羨ましい」

八尋は突然噎せるように咳き込み、大きく目を見開いた。

「本当に、そうお思いですか?」

「私、何か悪いこと言った?」

「いえ、周りからは、気味が悪いとしか言われないもので…綺麗だなどと、言われたことがありませんから。」

「嘘でしょう?八尋は、役者のようだよ。男と思えないほど綺麗だ」

「そのご様子では、頭領から、私の体の話はお聞きになっていないのですね。」

「体の話?」

「赤猫殿が先程仰られた、男とは思えない、という言葉ですが。その通り、私は男ではございません。」

「どういうこと?組織内に女は私だけと聞いたけど。」

「ええ、それはその通りですよ。私は男ではないですが、女でもありません。」

「男でも女でもない、って、どういうこと?」

「元は男、とでも申しましょうか?」

赤猫は混乱した。途中で性別が変わることなどあり得るのだろうか?
いや、変わったとは言っていない。
性別が、無くなる、ということか?

「あまり、気持ちの良い話ではありませんが、隠す程の話でもありません。興味がおありなら、お聞かせしますよ。」

赤猫はごくり、と息を飲み。

「聞いても、いい?」

と続けた。

八尋は、ニコリといつもの笑顔を見せた。
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