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陽炎ーカゲロウー
第7章 八尋
「私は、とある旅芸人の一座の、軽業師の子として生まれました。幼いころから芸を仕込まれ、各地を回って巡業の日々です。私が身軽なのは、そのせいです。」
「そうなんだ…」
「でもね。旅芸人というのは、それだけでは食うては行けぬのです。一座は動く廓と同じ。皆夜になると、客を取ります。」
「芸人の、女が?」
「女も男も。」
「男を、女が買うの?」
「稀に。でもね、世の中には、男を好む男がいるのです。大抵、そういう者に買われます。」
「男が男を買ってどうするの?」
八尋は困ったように笑って、
「赤猫殿も、頭領に抱かれるでしょう?それと同じことをするだけですよ。」
と言った。
赤猫は、ぼんやりと市九郎の身体を思い浮かべた。
それを二つ重ねたところで、何処がどうなるのかさっぱりわからない。ただ、八尋の気持ちの良い話ではない、という言葉を思い出し、深く追求しないほうがいい、と、本能的に思った。
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