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ゆずの譲れない物
第3章 ●想い
「ゆずちゃんって呼んでも良いかな?」

『え、あっはいっ』

「俺のことも呼んでよ」

勝井教授の前では、自分のことを私と言っていたのに、普段は、俺なんだなぁ
と妙なところに関心をよせていた

「ゆずちゃん、聞いてる?」

『あ、すみません。』

「名前呼んでよ」

『片桐 港さん』

「あはは!フルネームで、きたか!!予想外だったよ」

さっきまで見ていた困ったような笑顔ではなく、豪快に笑っていた


なんだか恥ずかしくなり顔を伏せてしまった
 

「フルネームで呼びたいの?」

頭に大きな手が乗ってきて顔をのぞき込まれる


ますます、自分の顔が赤くなっていくのを感じる


「ゆずちゃん黙ってたら分からないよ」
クスクス笑いながら、のぞきこまれる

からかわれてるのは、分かっていたが、何より恥ずかしくて、顔を上げられない


こんな経験は初めてだった


「ゆずちゃん、聞いてる?」

『聞こえてます』

ついに両手で顔を隠してしまった ゆずを見て

心底、かわいいと思った



絶対、離したくない。

傍にいたい。




『片桐さん』

「だめ」

『え??』

「下の名前で呼んで」

『み、みなとさん』

「本当にかわいい」

遠慮がちに下の名前をさん付けで呼ぶ ゆず

かわいくてたまらない


「ごめん。行き先を変更しても良いかな?」

『はい…』

「どこか、カフェでもと思っていたけど…どうやら、俺は独占欲が強いらしい
 今のゆずちゃんの顔を独り占めしたいみたいだ」

ブォーンと、重低音のエンジンがかかり、

自分の気持ちを話されたのはその時だけで、

目的地まで、会社での笑い話や、同僚の話、大学時代の友人の話など

たくさんしてくれて、たくさん笑った


この人本当にモテるだろうなと冷静に分析できた

そんなことを考えていると

来年度からお世話になる会社の近くの高層マンションまで来てしまっていた
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