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ゆずの譲れない物
第9章 ●準備
気持ちの整理も頭の整理もつかないまま

両親が経営するレストランに到着…

『み、港さん!あの…私まだ…彼氏がいるってことしか伝えてなくて…その…』

「大丈夫だよ!予約時にゆずちゃんと来ることは伝えてるんだ。内緒にしてて悪かった」

手をつないでドンドン足を進める港さん…

お父さんなんて言うかな…

お母さんは喜んでくれるかな…

ーーカランーー

「いらっしゃいませ」

「片桐です」

「オーナーより伺っております。ようこそいらっしゃいました。」

『こ、こんばんは…相原さん。ご無沙汰しています』

「ゆっちゃん、またキレイになったね」

相原さんは、レストラン設立時より、働いてくださっているホールチーフ

昔から私のことを

ゆっちゃん って呼ぶ

大人になった今もその呼び名は、変わらないままだった

「ゆずちゃん…柄にもなく緊張してきちゃったよ」

いつも自信に満ちあふれている港さん

ひさしぶりに困った笑顔をしている

港さんも緊張してるんだね!しっかりしなきゃ!

『港さん…』

いつも元気付けてくれる港さんに
気のきいた言葉の一つもかけてあげたいが、なにぶん私が緊張しているから、頭が働かない…

「大丈夫!行こう!」

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