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ゆずの譲れない物
第9章 ●準備
個室でコース料理を堪能し
デザートプレートが運ばれてきた時

ーーコンコンーー
港さんが立ち上がる

入ってきたのは、もちろん私の両親…

「こんばんは」

「ご挨拶が遅くなり申し訳ありません。こんばんは。ゆずさんとお付き合いさせて頂いております。片桐港です」

頭をキレイに下げ真剣な表情の港さんに見とれてしまった

『お父さんお母さん』

「片桐さん座りましょうか?」

優しい声でお父さんが話してる…
不思議な感覚…

「ゆず卒業おめでとう」
「ゆずちゃん行けなくてごめんね」

両親の言葉にジンとする

『ありがとう!』

「いつか、こんな日が来るとは思っていたけど、まさか、こんなに早くにくるなんてな…」

お父さんがお母さんに語りかけるように話したけど、お母さんは、ニコニコ笑顔

「もっと、早く挨拶をしたかったのですが…遅くなってしまいました。真剣に交際をさせて頂いております。」

「片桐さん、お電話いただいた時は、驚きましたよ…」

「急で失礼とは思ったのですが…卒業の日にどうしても挨拶をさせていただきたくて」

「片桐さんの誠意は、受け止めてますよ。」

「ゆずちゃん、まじめな方ね」

『うん!』

「片桐さんは、なぜ、娘を?」

「多分…出逢うべくして出逢ったと思うんです。私と似ている所がありまして…正直、外見もタイプでしたが…気配りや、真剣な表情を見て、いつの間にか目で追っていました。しかし、もっと、惹かれたのが…完璧と呼ばれている事でした。自慢ではないのですが、私自身、在学中よく言われた言葉でした…私は、ゆずさんの寄りかかれる場所になりたいと思いました。」

港さん…嬉しすぎて言葉も出ない…

「ゆずはね、子どもの頃から、忙しい私たちにわがままの一つも言ったことがなかったんですよ…私たちもこの子に甘えてしまっていたんです。妙に、物わかりが良い子でね、穏やかな温かい子に育ってくれたと思ってるんですよ!
弱音も吐かないけど、言葉には出さないが負けず嫌いでね、親の私が言うのも変なんですが…
常に何でもトップにいたんですよ!

つまり…自慢の娘なんです

自慢の娘が選んだ片桐さんなら、大丈夫だろうと妻とも話をしていたんです」

『お父さんお母さん』

涙が止まらない…温かい港さんの言葉に、今まで
本音をなかなか言えなかった両親がちゃんと私を見てくれていた事に…
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