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世界は灰色で、君は虹色で
第1章 世界は灰色で、君は虹色で
「……さん、愛してます」

「私もですよ」

 帰宅して、私はまたいつものため息を吐く。どうして、この女はいつも。逃げられてもなお男に溺れる?出張ホストに来てもらって愛を語らう。どうして、それが偽者の愛だと、仕事なのだと気づかないのだろうか。お金が無くなれば、そんな嘘終わってしまうのに……。なんてこの女は哀れなのだろうか。私は絶対にこの女みたいにはならない。男なんて利用するもの。私はそうやって生きていく。





 自室に行き、制服を脱ぎ捨てる。黒のカットソーにデニムのスカートの私服に着替える。メイクを整え、コートを羽織る。男の腕枕で眠る女を横目に外に出て、友達との待ち合わせ場所へ。




「遅ーい」

「ごめん、ごめん」

 なんばの映画館前に女の子、五・六にんで集まる。いつも通り、商店街を回って、最後はファーストフード店でだべりタイム。

「優奈はいいよね。可愛くてお洒落で。いつ男に誘われてもいいって感じ」

「そんなことないよ。みんなだって可愛いよ」

「ははっ、またまたー、優奈はあたしらの恋愛リーダーだよ」

 “恋愛リーダー”それが私の肩書き。みんなは私のことを何も知らない。みんなに彼氏として紹介してる二十二歳で社会人の男は只のセフレ。振りをしてもらっているだけ。

「ありがとね」

 その時、ちょうど携帯のメール音が鳴る。

[今から会えない?]

「ごめん、彰人からだわ」

「噂をすればだねっ! 行っておいでよ」

「うん、ごめんね。またねっ」

 友達たちの気遣いに、私は一言を交わし、席を立つ。

[いいけど、どこいんの? 私はなんばにいるけど]

[だと思った。いつも通り、映画館の前で待ってて]

[了解]

 彰人とのメールはいつもこんな感じ。用件だけの淡白な内容。女の子らしいキラキラとしたメールが苦手な私にとっては気が楽だ。
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