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世界は灰色で、君は虹色で
第1章 世界は灰色で、君は虹色で
「お待たせ」

「んー」

 彰人が来て、私たちはいつものホテルに向かう。お金は彰人が出してくれる。高級なわけではないが、汚くもない。そこそこ綺麗でお手軽な価格。この辺は、少し横道に逸れるとホテル街だ。色々、回った末に見つけたのが、ピンクの看板が目立つこのホテル。だけど、中はどぎつくない。部屋が並んでいてアパートみたいな印象を受ける。

「シャワー浴びてくるわ」

「どうぞ。私も彰人が終わったら入る」

 友達には一緒に入るなんて大嘘つくけど、そんなわけない。だってこういう関係だから。
彰人のシャワーが済んでから、私も浴びに行く。上がると彰人は眠りこけていた。私はその唇にいつものようにキスを交わす。

「んっー…」
 
 唇を離し、目を開けると彰人と目が合う。私はベッドに寝転び、彰人が上に来る。舌を絡める濃いキスをして、彰人の口は胸元へと下がっていく。

「あっ」

 彰人は私の声に気をよくして、さらに下へと攻めてくる。彰人の荒い息。ひとしきり、唇で堪能すると今度は、指を私の蜜部に侵入させる。

「んんっ」

 こんなの演技だ。全然、気持ちいいだなんて思わない。喜ばしているだけ。尻尾を振る雄犬にいい思いをさせてあげているだけ。そう自分に暗示をかける。

「欲しい?」

「欲しいよ」

 彰人がそうしたいだけでしょ? 内心そう思うけれど、口には出さない。彰人は自身を私の中へ挿れる。お互いの絡まる息使い。この瞬間ばかりは、彰人を好きなのではないかと錯覚する。それは彰人も同じようで。

「優奈、愛してるよっ」

「私も彰人、愛してる」

「俺、もっ……ごめっ」

 彰人は私の中へ欲望を吐き出した。でも、後に襲うのは嫌悪寒。私がやっていることは、あの女と同じことなのではないだろうか。違うちがうチガウ。自分に言い聞かせる。

「優奈って、いつも終わった後、悲しそうだよな」

「違う。そんなわけないよ」

 ドキリとした。気づかれている。だけど、必死に隠す。
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