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心雨~愛を探して~
第10章 あの雨の日
俺のことを話した夜から、村山は高校を休みがちになった。村山の家が通り道で、仲の良いこともあり、俺はよくプリントを届けていた。チャイムに村山が出ることはなかった。
けれど、あの雨の日、窓のカーテンの隙間から俺は見てしまったんだ。そして、知った。村山があの夜、あの場所で泣いていた理由。誰にも言えずに一人、暗闇で耐えていたこと。村山を今、守れるのは俺しかいない。
何度も何度もチャイムを鳴らし続けた。何度目のチャイムでだろうか。
「なんや、小僧。プリントやったらポストに入れておけばええやろうが!」
村山の父親からは、噎せ返る程のアルコールの臭い。
無理矢理上がりこもうとすると体を掴まれた。けれど、酔っている相手なんて直ぐに突き飛ばした。
「村山!」
奥の部屋で見た村山は、痣だらけの裸の体に無表情の顔。感情をなくし、口なしの人形のようだった。その瞬間、俺の中で何かが弾け飛んだ。台所に行く。