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心雨~愛を探して~
第11章 不器用な愛
けれど、それは叶わなかった。その日を境に僕は自分をコントロールできなくなってしまった。全てを手に入れたことで、母親とのことが余計に思い出され、不安になる。
手を上げて、彼女が「成瀬くん」と呟くたびに、見知らぬ男の横で微笑む母親が頭に過ぎる。
増えていく薬。不安定な心。心を支配する恐怖。もう一人の僕。
だけど、今日、成瀬を見て、出逢ったあの頃のような笑顔を常に見せる彼女に、僕は思った。
僕は、成瀬との勝負に負けた。彼女を幸せにできるのは僕じゃない。
もう彼女を僕という呪縛から解放してあげよう。
ありがとう、杏。僕は君に出逢えて幸せだったよ――。
僕は床に転がる包丁を手にして、自分の心臓めがけて、一気に貫いた。
手を上げて、彼女が「成瀬くん」と呟くたびに、見知らぬ男の横で微笑む母親が頭に過ぎる。
増えていく薬。不安定な心。心を支配する恐怖。もう一人の僕。
だけど、今日、成瀬を見て、出逢ったあの頃のような笑顔を常に見せる彼女に、僕は思った。
僕は、成瀬との勝負に負けた。彼女を幸せにできるのは僕じゃない。
もう彼女を僕という呪縛から解放してあげよう。
ありがとう、杏。僕は君に出逢えて幸せだったよ――。
僕は床に転がる包丁を手にして、自分の心臓めがけて、一気に貫いた。