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秘密のキスは蜜の味【完結】
第29章 私たちの場所

葉瑠?そんなに振り返ってばかりいたら人にぶつかるよ!
葉瑠が見えなくなるまで見ててやるから前向いて

(キャッ!…ごめんなさい)
あ~ほらっ…やっぱりぶつかった。

クスッ…頭を下げて謝ってる。
それから振り返って俺を見てくるんだ。

……今のしっかり見てたぞ?……

きっと変なところを俺に見られて恥ずかしいんだな、すぐに俯いて歩きだした……


あ~なんだまたかよ──

ほんの数百メートルだぞ、いったい何人の男に声を掛けられるんだ?
同僚か?挨拶なんだろうけど

葉瑠は俺が気になって振り返るからその度にみんなこっちを見る。

〝あれ誰?〟……とでも言ってるんだな。
葉瑠は俺の事をちゃんと彼氏って言ってんのか?

いいさ、みんな俺を見とけよ?

俺が葉瑠の彼氏だぞ、もう売約済みなんだから葉瑠を何とかしようなんて考えるなよ。

葉瑠はビルの入り口で立ち止まり、もう一度振り向いた。

俺は葉瑠に見えるように携帯を出して耳に充てて頷いた。

わかるか?連絡するからって意味だぞ。

コクコク……葉瑠は大きく頷くと遠慮がちに手を振ってビルの中へと入っていった。

ここからじゃ遠いから葉瑠の表情は見えないけど今俺の顔を見てニッコリ笑ったよな?たぶん

そこから暫く会社のビルを眺めていた…

うん出てこないな。もしまた葉瑠が外に出てきて俺がいなかったら寂しいかなって思ったらなかなか動けなくて……

クスッ 笑えるな!きっと俺の方が寂しいんだ。


さてと…じゃ俺も会社に顔出してひとり極寒のアパートへ帰るとするか。

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