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tsu-mu-gi-uta【紡ぎ詩】
第162章 「師任堂の深紅の絹の包み」を読んで
 いずれ母の生涯を書きあらわしたいけれども、いまはまだ自分にはできないーと、イは修養の旅に出るのだ。
 また物語の初めも、イが母の遺した深紅の絹の包みについて、思い悩むシーンから始まる。
物語はそこから過去へーサイムダンの少女期、ジュンソとの出逢いまで遡って進むのである。
 本当に読み応えのある作品だった。読者である私自身があるときはサイムダンと一心同体となったのように悩み泣き、怒り、歓んだような気がする。
 何百ページもの長いサイムダンの生涯を彼女と一緒にたどり、はるか昔の朝鮮王著時代を風のように、しなかやに駆け抜けて生きたような心持ちになれた。
 そこから浮かび上がるのは、才能豊かな女性にとってはけして生きやすいとはいえなかつたであろう激動の時代下の封建社会で、ただひたすら真摯に生きた申・サイムダンという女性の赤裸々な姿でしかない。
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