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tsu-mu-gi-uta【紡ぎ詩】
第22章 人として生きていく哀しみ ~鬼平犯科帳 おみよは見た より~
そんなある日、小平次とおみよが偶然、再会。

 顔色を変えたおみよを見て、彼はやはり、おみよが自分を知っていると悟りました。

 見られていたからには、このまま生かしてはおけない。

 小平次は心を鬼にして、おみよを殺害した-はずだった。

 だが、彼が殺したのはおみよではなく、おみよの新しい奉公先の女中仲間だった。

 年格好が似ていたので、間違えて殺してしまったのです。

 おみよはこれで、小平次を庇うのは止めました。

 この人が殺したんです。

 と、ついに平蔵たちの前ではっきりと真実を告げました。

 何故、おみよが小平次を庇っていたのか?

 おみよは言いました。

 私はおかみさん(妾)を憎んでいました。

 この人は私がやりたかったことを私に代わってやってくれたんです。 

 つまり、小平次が殺さなければ、自分がいつか殺していたかもしれないと

 言っているのです。

 しかし、彼はおみよの大切な友達を殺した、だから、もう庇う必要はないと

 言います。

 殺された娘も捨て子で、鬼子母神にお参りして実の両親に逢うという願いを

 聞き届けて貰うのだと話していたのに。

 我が子を捨てた親が捨てた我が子に再会して歓ぶかどうか?

 極めて疑問ですが、捨てられた娘はただ逢いたいと一途に願っている。

 その願いも果たせずに無残に身代わりになった別の娘の運命にも

 涙を誘われます。

 この話はどこかにオチがあるというわけではありません。

 ただただ、人の運命の哀しさを描いているのてはないかと思います。

 親に捨てられた少女の悲哀、元は旗本でありながら、事情か゛あって殺し屋に

 身を落とした男の罪深さ、身代わりになって殺された少女の儚いさだめ。

 すべてが回り回っての宿命としか言いようがなく、

 それがまた何とも残酷すぎるほどの繋がりというか運命なのです。

 それを淡々と描くドラマの向こうに、平蔵の彼等を見つめる慈しみの視線と

 やりきれない思いが透けて見える。

 繰り返しになりますが、本当に何も大きな事件が起きるわけでもなく

 大どんでん返しがあるわけでもない。

 男と女の悲恋も情愛もないのに、見ていると心を絞られるような切ない気持ちに

 なります。

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