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tsu-mu-gi-uta【紡ぎ詩】
第193章 秋のアンソロジー「初秋三題」
「夏名残」
空気が冷たさを増した朝
地面に張りついた蝉一匹
まるで生きているかのように
変わりない美しい姿をとどめ
うつろいゆく季節の中
孤独に一匹
永遠の眠りにたゆたっている
生命の輝きが失われても
かつての存在感を鮮烈にとどめたままで
ただ無情な刻だけが
彼の傍を猛スピードで流れ去る
新しい季節の訪れを告げる秋の虫たちの声が
潮騒のように押し寄せる中で
彼の周囲だけ刻を止めている