この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
弓月 舞 after story 集
第7章 君の視線が絡み付く
どうして?
「…ご、ごめんね…大声だして」
どうして私が謝ってるの?
「映画見るのは……っ、私が帰るまで我慢してね。今はほら、べん きょう、しなきゃ」
どうしてこう…上手くいかないの?
どうしてユウキくんは私の言う事を聞いてくれないの?
どうして意地悪ばかりするの…?
そんなに私が気に食わないの…!?
そんなに私は、嫌われてるの…!?
「──…先生、泣いてる…!?」
「……ッ…ぅ、ぅ…」
対処のしようがなかった。
大声を出したせいで興奮してしまったのか、突然涙が溢れてきた。
泣くほどの事じゃないのはわかってる。でも止まらない。
頭の中で自分を卑下する言葉が飛び交い、それらが鋭いトゲに変わって自分の胸に突き刺さる。
これでは、駄目だ。
ユウキくんがますます驚いている。変に思われてる。
だから勉強を再開しなければと焦って、焦って
焦って持ったペンの先が震えて…字なんて書けそうにない。
“ 泣くの止めないとますます嫌われる… ”
嫌な汗がどんどん出てきて、唇まで震えた。
....ギュッ
「‥‥‥!」
「どうして泣いてるの……、先生」
その時──手の震えが止まった。
いや、止まったのではなくて、止められたのだ。
ペン先が定まらない私の右手を、ひと回り大きなユウキくんの手が握っている。それと同時に……
どうして、どうしてと
私の中で飛び交う言葉を、代わりに彼が口にした。
「何が悲しいの?」
「何が…って、……それは……」
「……」
「ユウキくんが…!!…イジワル…ばかり、すること」
「ああ、……俺のせいか」
テーブルから離れようとしていた彼が、私の隣に戻って座る。
手を握っているほうと逆の指で、俯く私の頬にちょんと触れた。