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弓月 舞 after story 集
第7章 君の視線が絡み付く


どうして?


「…ご、ごめんね…大声だして」


どうして私が謝ってるの?


「映画見るのは……っ、私が帰るまで我慢してね。今はほら、べん きょう、しなきゃ」


どうしてこう…上手くいかないの?

どうしてユウキくんは私の言う事を聞いてくれないの?

どうして意地悪ばかりするの…?

そんなに私が気に食わないの…!?



そんなに私は、嫌われてるの…!?



「──…先生、泣いてる…!?」

「……ッ…ぅ、ぅ…」


対処のしようがなかった。

大声を出したせいで興奮してしまったのか、突然涙が溢れてきた。

泣くほどの事じゃないのはわかってる。でも止まらない。

頭の中で自分を卑下する言葉が飛び交い、それらが鋭いトゲに変わって自分の胸に突き刺さる。

これでは、駄目だ。

ユウキくんがますます驚いている。変に思われてる。

だから勉強を再開しなければと焦って、焦って

焦って持ったペンの先が震えて…字なんて書けそうにない。

“ 泣くの止めないとますます嫌われる… ”

嫌な汗がどんどん出てきて、唇まで震えた。







....ギュッ





「‥‥‥!」


「どうして泣いてるの……、先生」



その時──手の震えが止まった。



いや、止まったのではなくて、止められたのだ。

ペン先が定まらない私の右手を、ひと回り大きなユウキくんの手が握っている。それと同時に……

どうして、どうしてと

私の中で飛び交う言葉を、代わりに彼が口にした。


「何が悲しいの?」

「何が…って、……それは……」

「……」

「ユウキくんが…!!…イジワル…ばかり、すること」

「ああ、……俺のせいか」


テーブルから離れようとしていた彼が、私の隣に戻って座る。

手を握っているほうと逆の指で、俯く私の頬にちょんと触れた。


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