この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
弓月 舞 after story 集
第7章 君の視線が絡み付く
「…なら、イイや」
何がいったい、イイのだろう。
検討も付かず盗み見た彼の顔は──微笑んでいた。
いつもの意地悪な笑顔に似ているけれど、少しだけ違う。
何故だが……今だけは純粋な優しさを感じる淡い笑顔をしていて、なのに、目だけはいつも以上に生き生きとしている。
夏休みだからと明るく染めている髪の隙間から、ひどく熱っぽい瞳が私を見据えている気がした。
私のほっぺに触れていた指は、まるでその温度を確かめるかのようにゆっくりと涙を拭って……離れた。
「泣かせてごめんね?映画見るのは後にするから許してよ」
「…っ…ほ、んと…?」
「うん」
「………あ、あの…でも」
「ほら、間違えたとこの解説してくれるんでしょ?……センセ」
「わかったけど…っ、その、手を離してくれないと…」
「ああ…ごめん」
私に言われてユウキくんがぱっと手を開く。
彼は両肘をテーブルに投げ出すと、腕に頭をもたれさせ、上目遣いでこちらを見上げた。
「……//」
私は涙を流しながら息を呑んだ。
首をひねって脱力した彼の姿勢は、真面目とはほど遠い色気の塊──。
女の子みたいに色白で綺麗な顔立ちのくせに、ノースリーブの袖口から隆起した肩の筋肉が男らしい。
加えて、この目だ。
ギラついた目……。すごく、すごく危険な目。
彼が何故泣いている私にこんな視線を向けてくるのか、まるでわからない。
わからないけれど…胸の奥が熱くなる。
とても怖いのに惹きつけられる。
どうしてそんなふうに……!?
「じ……じゃあ、…さっきの問題を…説明すると」
逃げるように参考書を開いて目をそらした私の声は、みっともないくらい上ずっていた。