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禁断の果実に口づけを
第10章 普通に憧れる洋子

 ラーメン屋を後にすると、約束通り、伸介の運転で車は走り出した。
私の車を伸介が運転し、助手席に乗る。
多少違和感を感じつつも、女性の特等席とでも言われる助手席に座ったのは大分ご無沙汰だった。
こんなシチュエーションにも酔えてしまう。
クリスマスを来週に控えたFMからは、引き続きクリスマスソングが流れた。
懐かしい、八十年代に流行ったイギリスのミュージシャン二人組の曲が掛かり、伸介はハンドルを握りながら口づさんだ。
伸介の声は、いつもなら男らしい低い声なのに、甘く切なくその曲をリズムに合わせて歌う。
英語の発音もキレイで驚く。

「この歌、知ってるの?」

「あぁ…」

「かなり古いじゃない」

「毎年、この時期掛かるじゃん」

「それで覚えたの?」

「いや、中学の時、英語の授業でこの曲を掛けて、和訳しろなんてのがあってな、面白いから全部和訳してやった!」

「へぇー」

 意外じゃない。
馬鹿だとは思ってないけど、そんな一面もあるのね。

「THE男の純情みたいな歌詞だよな。
確か、愛した女にあっさり振られて、未練を断ち切れないでいるけど、今度本気の恋をしたら、その情熱はそっちに向ける。
同じ過ちは繰り返さない的な?
まぁ、男も女も本気の恋して失った時は、ジメジメと女々しくなんだろーけどな」

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