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禁断の果実に口づけを
第12章 週明けの女達
洋子の天敵でもある川端伊織。
洋子の席の前を通り、朝の挨拶を交わすと…
「秋山代理、髪、切りましたよね?」と聞いてきた。
いかにも、『私は気づいてあげますよ』的な挑戦的な眼差しを向けたが、伊織の控えめな声のトーンはそれを隠す。
「ええ」
「似合いますね」
一言言うと、自分の席へと歩きだし、同僚とにこやかな笑顔で朝の挨拶を交わしていた。
✾✾✾
この女は、かよわい羊の仮面を被り、奥底の本性をひた隠しにする。
最近では、契約を徐々に取り始め、『まぐれです…この仕事は、今月が良くても、来月を考えると怖い…』などと言いながら健気な言葉で周りを安心させ、着々と可愛がられる環境を作り出し、ぬくぬくと生きている。
周りは、成績では特別目立たないこの女に敵視なんてしない。
もっとも、自分の事で精一杯で、周りと比べて焦り、劣等感を抱いてストレスの捌け口を探し、私の様な人間や成績の良い者を疎ましく思い、女特有の陰湿さを影で存分に発揮してくる様な女達が大半なんだから。
こんなうんざりしてしまう環境の中で生きていたら、嫉妬の炎をひた隠ししにし、要領よくやらなければ潰れてしまうんだろう。
洋子はこの空気を眺め、心で呟いていた。