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鏡の中から…
第8章 始まり
お婆様は微笑んで
「それでよい。
家業は…廃れる時代を向かえる
家族を犠牲にして…続ける事ではなかった
雅龍の思いを犠牲にして…
続けるべきではなかったのだ…」
そう言葉を続けた
昔…
哀しそうな瞳をした……龍を見た
哀しそうな瞳をした龍は………
総てを諦め……達観していた
先代の神楽 鈴音の魂を送っていた
神楽に伝わりし…龍だと…後に聞いた
お婆様は…雅龍を呼び出せる力はなかった
だから…雅龍を…
鏡の中へ…還らしてしまった
『お主…名は?』
鏡に入る龍は…ずっと見ている存在に気付いていた
何処かへ行くかと想っていれば…
行く気配もない
だから声を掛けた
『神楽 雅世』
『雅世か…また逢おうぞ』
龍はそう言い…
鏡の中へ消えて行った
お婆様は…
何時か…あの龍に逢いたいと…願っていた
悲しい…瞳をした龍が
幸せそうに…笑えば良いのに…
子供ながらに…そう思っていた
あれから四半世紀…
お婆様が心を痛めた龍は
幸せそうに…笑っていた