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偽りの身の上〜身代わりの姫君〜
第5章 おうさま
舐めてみたかった。味なんかするのかとも思ったけれど、ちゅうちゅうと吸うと僅かに塩っぱい液体が出てきた。
私の答えに恥ずかしそうに顔を覆ってため息をつくと、複雑そうな顔でそうかとだけ言って頭を撫でた。
そのまますっぽりと腕の中に収められ、ベッドの中に再び沈められる。
汗で気持ち悪いはずなのに、密着した体は心地良い。そのまま眠ってしまいそうになって顔を上げた。
「ジバル様……あの、満足できましたか?」
王子はもっと立て続けにやっていたからそれが普通だと思っていた。ジバル様は我慢しているんだろうか。そんな気持ちから聞いたけれど、彼はふわりと笑った。
「ああ、幸せだ。……足りないか?」
悪戯っぽくニヤリと笑う。私は急いで首を振った。もちろん満ち足りている。体はもちろんだがそれ以上に心が満ちているようで、不思議な感覚だった。
(ジバル様もそうだったらいいな……)
幸せに満たされて、もうこれ以上は何もいらないと思える。
愛しい人の腕に抱かれて時折額に、髪に、キスを落とされながら夢うつつになるなんて、なんて贅沢なんだろう。
(……それもあと二日……)
そう思うとちくりと胸が痛んだ。
***