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偽りの身の上〜身代わりの姫君〜
第7章 エピローグ

ハイネはひらひらと手を振り、部屋を出る直前に、私をじっと見た。


「? なんです? ……まさか、やっぱり臭います?」

「違う。その、今日は……色々あったからこういう日を迎えられたと思うし……その、だから……」

「ハイネ様?」


「…………〜〜〜……あ、り、……がと」


顔を真っ赤にして視線をそらすと、まるで機械で合成したようなイントネーションでそう呟いた。

おそらく初めての感謝の言葉。胸が熱くなる。


「はい!」

「ふん。……僕は先に行くからね」


耳を真っ赤にして部屋を出て行ってしまった。

そっと廊下に出て彼を見ていると気づけば隣にはジバル様が立っていて、肩を抱いてくれる。


「良かった……」


明るい日差しを受けて、白い廊下が発光したように眩しい。まるで光の中を堂々と歩く、その小さくも逞しい背中を見つめていると、自然と笑みが溢れた。


「……何度感謝しても足りないな」
「ハイネ様に?」

そう問いかけると、ジバル様は「分かっているだろう」と顔を寄せた。

「ミアにだ。君に会えて、オレも、ハイネ様も幸運だった」

頬にちゅっとキスをする。その熱心な視線がくすぐったい。

「ふふ、大袈裟ですよ」

「本当だ。……ミアが好きだ。日々募っていくばかりで、自分で恐ろしくなるほど、君が好きだよ」

真っ直ぐに見つめられ、真剣な様子で語る。私はまた胸に花が咲き乱れるような感覚に目眩を催しながら、その手を握った。


「私も、ジバル様が好きです。大きくて心優しいあなただから、私は逃げ出さないで、ここに居続けられたんだと思います。……そして、これからも」


綺麗な緑の瞳が窓からの日光に反射して煌めく。わずかに細められても、その瞳の美しさは変わらない。

そして光の中で、触れるだけの誓いのキスをした。


呪いをかけられた王様たちは、ようやく光の道を歩き出したから。




END
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