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エンブレム──奴隷契約編
第1章 序章

新学期初日、生活指導の田島はいつものように放課後の校門前で生徒の身なりや持ち物をチェックしていた。
田島が登校時だけではなく放課後もこうして校門前に立つようになったのは麻美に恋をしてからだった。
ほどなくして麻美が校舎から出てくるのが見えた。
たちまち田島の胸がドキドキとときめいた。
だがそのときめきも今日は一瞬で消え去った。
信じられない事に、校舎を出た麻美はすぐさま傍らにいた男子生徒と手を繋ぎニコニコしながら歩き始めたのだ。
田島は自分の目を疑った。
今日までの二年間、麻美はいつも数人の女子生徒と並んで下校していた。
男ッ気などまるでない清純無垢な女子生徒だったのだ。
それが今、一歩一歩自分に近づいてくる麻美は男子生徒と手を繋ぎ顔を赤らめている。
誰がどう見ても彼氏と彼女の仲だった。
田島の動揺は半端な物ではなかった。
「先生さようなら」
次々と交わされる生徒達からの挨拶に応える余裕もない。
ただ唖然と仲睦まじい麻美達を見つめるだけだった。
「あ、田島先生さようならー」
田島とすれ違いざま麻美が声をかけた。
いかにも機嫌良さそうな明るい挨拶だった。
しかし、田島にはそれが「さよなら」と本当の別れの言葉に聞こえた。
「麻美、なぜ俺以外の男と……」
経験した事がないほどの悲しみと敗北感に襲われた田島は心の中で呟いた。

