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エンブレム──奴隷契約編
第9章 悲壮


麻美が放課後の生徒指導室を訪れるようになってから約一ヶ月が過ぎたある日の事。


田島からの調教を終えた麻美はいつものように圭介と待ち合わせてから帰路についた。

かつては手を繋ぎいちゃつきながら歩いた駅までの道も、今では手を繋ぐことも笑いながら会話することも無くなっていた。


「来週からいよいよ地区予選だね。頑張ってね圭介君」

道中、麻美が笑顔で圭介に言葉をかけた。
○△学園の地区予選が来週から始まる。
もちろん圭介もその事を知っていた。
この話題なら駅までの道のりで会話が途切れる事はないと麻美は思っていた。


「私、応援に行くから。頑張ってね」


「う、うん……」


しかし、いくら麻美が元気に話しかけても圭介はポケットに両手を突っ込んだまま無愛想な返事を返すばかり。


「どうしたの?元気ないね……。練習疲れた?」


「いや、別に……」


「なーに?もしかしてケガでも───」


圭介の顔を覗き込み麻美が話しかけたその時だった。
圭介が突然足を止め怒鳴り声をあげたのだ。


「うっせーな!なんでもないって言ってるだろ!ウゼーんだよそういうの」


「え……?」


麻美は困惑した。
圭介が自分にこんな態度をとったのは初めてだったし、何故自分が怒鳴られるのかわからなかった。


「ご、ごめん……私はただ圭介君が心配で───」


「なんだよ恩着せがましい言い方しやがって、麻美のおかげで地区予選に出れるとでも言ってもらいたいのか?」


「そんなっ……そんな事思ってないよ」


「どうせ心の中じゃ早く負ければいいのにって思ってるんだろ?そうすりゃ田島のとこに行かなくて済むしな」


「ひどい……」


麻美は絶句しその場に泣き崩れてしまった。


「ちっ」

圭介はバツが悪そうに舌打ちし、「明日から練習遅くなりそうだから、もう俺を待ってなくていいよ。てかよ……もうどうでもいいわ」


泣き崩れている麻美を置いて、圭介は一人でとっとと駅に向かって歩いていった。

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