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エンブレム──奴隷契約編
第9章 悲壮
麻美の心は大きく傷ついた。
圭介の理不尽な言葉は、ある意味田島の陵辱行為よりも麻美の心を傷つけたのだ。
「何故私が……何故私だけがこんな目に……」
泣いても泣いても涙が止まらない。
麻美の涙が止まったのは圭介から「今日はごめん」と短文のメールが届いた夜中だった。
翌日の放課後、麻美はいつも通り生徒指導室を訪れた。
「ご主人様、今日も奴隷の私を可愛……か、可愛がって……うっ、うっ」
田島の前に膝まずき挨拶をしていた途中、ふと昨日の事を思い出し麻美は泣き出してしまった。
「もうどうでもいいよ」
圭介の冷たい言葉が耳から離れない。
「今日はごめん」
短い謝罪の意味がわからない。
謝るから田島との関係は続けてくれと言っているようなものだ。
「おい、お前は挨拶もろくにできないのか?」
容赦なく田島の言葉が麻美を襲う。
それでも麻美は泣き続けた。
今、ここに自分がいる理由がわからなくなっていたのだ。
「返事も無しとはいい度胸だな麻美」
田島はスッと椅子から腰を上げヒタヒタと泣き崩れている麻美に近づいた。
いつもの麻美ならその恐怖に反応し姿勢を正すはずだったが、今の麻美はそれでもメソメソと泣き続けていた。
麻美の心は恐怖よりも哀しみに縛られていたのだ。
「逆らえば罰を与える、それが決まりだ。だが、言い訳は聞いてやる。言ってみろ」