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捨て犬
第11章 なんで脱がされてんの?
玄関に入ると
台所に立つエミは見えたけど
俺に気付いてないのか
振り向きもしないエミ

そんなエミに
俺は声をかけた


「ただいま」


「あっ」


エミは驚いて振り向き
包丁を持つ手を
休めようとした


「そのまま続けていーよ」


と、声をかけて
俺は靴を脱いだ

どうやら
エミは
玉ねぎを刻んでる最中だったらしく
振り向いたその顔は
涙でグズグズだった(笑)

エミの横に立ち
濡れた頬を指でぬぐい
ただいまのキスをして
俺は優しくエミに話しかけた


「大丈夫か?」


「………」


相当キツイみたいだな

うんって言わねーで
俺の顔じっと見てる

助けてって顔でさ

でもさ
どーしよーもねーよ
玉ねぎはさ。


「頑張れ
俺が涙は拭いてやっから」


「ん」


「もしかして…ハンバーグ?」


「うん」


「やった!めっちゃうれしい!」


そこで
エミは少し微笑んだ


カバンを置いて
エミのすぐ側に立ち
俺は
エミの頬を流れる涙を
何度もぬぐってやった


エミの手つきは
俺が汗かきそうなくらい
めちゃくちゃ下手で
見てられない


その時だった


「あっ!」


「ぅうっ」


エミはまた
指から血を流してしまった



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