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掌の官能小説
第14章 だって、好きだから!
会議は順調に終わり、各部長達はこの後飲みに出掛けようと誘い合っていた。
佐山も誘われたが、翌日自転車で遠出をしたかったので、断ったのだった。

戸締まりは佐山が引き受け一番最後に会社を出ると、美春が立っていた。

「矢田さん?どうしたの?忘れ物?」
佐山は驚きながらたずねると

「そう、忘れ物をしちゃいまして…」

「大切な物?今会社を開けるから…」

「あ、ち…違います。会社の中にじゃなくて…」

「ん?」

「忘れ物は…」
そう言い、佐山を見つめていた。

「ん?なんだ?」

美春の足元がふらついた。
咄嗟に佐山は美春を掴むと

「忘れ物は部長。ふふふ。一緒に帰りたくて。そこのお店で飲んで待っていたの。」

「は?俺?それは困るよ。」

「困るんですか?何故?」

「君は部下で…一緒にいたら…」

「部下だとダメなんですか?じゃあ、会社を辞めたらいいんですか?」
佐山の顔を覗き込みながら美春はにっこりと笑っていた。

「酔ってるな。ちゃんと、帰れよ?」

「部長と帰りたいのに。」

「酔っ払いと歩きたくないし。」

「そうですか…じゃあ、素面の時に一緒に帰って下さい。おやすみなさい。」
そう言い、フラフラと美春は歩き出した。

繁華街には危険がいっぱいで一人で酔っ払った女性を歩かせる訳にもいかなく、仕方なく佐山はタクシーを止めた。

「どこだ?家は…」
タクシーの運転手に美春は行き先を告げた。

「部長に送って貰えるなんて…嬉しい…で…」
美春は寝息を立て始めた。

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