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掌の官能小説
第15章 となりののりこさん
マンションの隣の部屋に夫婦が引っ越してきた。
引っ越しの当日僕に挨拶に来たのだ。
旦那は60歳過ぎだろうか、奥さんは30歳半ばくらいにしか見えなかった。
まぁ、人の年齢なんて見た目と実年齢は違ったりするし。

旦那はロマンスグレーの髪をした長身で落ち着いた感じで奥さんは、元グラビアアイドル的な体つきをしており、顔は童顔だった。
童顔が若く見えているのかもしれないが、首筋を見た感じはやはり30歳くらいだろうと思った。

金持ちは若くて綺麗な嫁を貰えるのか…
自分も金持ちになればこんなグラビアアイドルのような女が嫁に来てくれるのか…そんな事を思ったのだった。


僕は絵描きをしており、ボチボチと売れてはいるので贅沢をしなければ生活は出来るようになっていた。

嫁は欲しいとは思えず、たまにモデルの女性といい仲になり付き合ってはいたが、僕は自己中なので、愛想をつかれて別れてしまうパターンばかりだ。

面倒なのは好きでは無いので、来る者拒まず、去る者追わず…といったところだ。


あ…隣に引っ越してきた夫婦の話でした。
引っ越しの挨拶に有名ショコラティエの名前の付いた紙袋を貰ったのだ。
なんでも知り合いだそうで…

紙袋からリボンの付いた可愛らしい花形の箱を取り出し、箱を開けると
「宝石箱や〜」
と思わず言ってしまうような綺麗なチョコレートが並んでいた。

一粒取って口の中に入れると、滑らかな程よい甘さのカカオの味が口の中に広がった。
その時にあの奥さんが頭に浮かび、
「このチョコレートのような味がするんだろうな…」
と思ったのだった。

後で知ったのだが、この奥さんをイメージして作られたチョコレートだったとの事だった。

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